大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所八王子支部 昭和51年(家)1881号 審判

申立人 田代庄三郎(仮名)

主文

被相続人の相続財産に属する

東京都○○○郡×××町△△字○○○×××番×

雑種地 三三m2

を申立人に与える。

理由

申立人は主文同旨の審判を求めた。

本件調査の結果によれば以下の事実を認めることができる。

被相続人田代誠(以下単に被相続人という)は昭和四八年二月二三日に死亡したが相続人のあることが明らかでなくその相続財産について同年七月一〇日本件申立人田代庄三郎が相続財産管理人選任の申立を当裁判所になしたがその申立に際し相続財産として表示されたもの(土地および建物)のなかに本件土地は含まれていなかつた。昭和四九年六月一四日相続財産管理人として田代庄三郎が選任されて同人が本件土地を除くその余の相続財産を管理した。そして昭和五〇年四月八日に同年一一月一〇日までに相続権の主張をなすべき旨相続人捜索の公告がなされ、右期間内に相続人の申出がなく、同年一二月一三日に田代庄三郎が被相続人と生計を同じくし、且つその療養看護に努めた者として本件土地を除くその余の相続財産について分与の申立をなし昭和五一年四月一五日本件土地を除くその余の相続財産を田代庄三郎に与える旨の審判がなされた。(この間に田代庄三郎は相続財産管理人を辞任し、昭和五一年四月一二日田代二三夫が相続財産管理人に選任された)。田代庄三郎は同年七月上記分与審判に基づき所有権移転登記の手続を司法書士に依頼したところ、その司法書士が不動産登記簿を閲覧して本件土地を発見し、そのときはじめて田代二三夫も田代庄三郎も被相続人の相続財産のなかに本件土地のあることを知つた。そこで田代庄三郎は同月七日本件土地の分与を求めるため本件申立をするに至つた。

以上の事実を認めることができる。

上記認定の事実によれば、申立人田代庄三郎の本件申立は上記相続人捜索の公告に定められた催告期間の満了した昭和五〇年一一月一〇日から三ヶ月を経過した後になされている。そこで本件申立が適法であるか否かについて考察する。相続財産の一部が民法第九五八条の催告期間満了後三ヶ月を経過した後に発見され、それまでは相続財産管理人も、又分与を求めようとする者もその財産の存在を知らなかつた場合には、その相続財産について相続財産管理人によつて国庫帰属の手続が採られるまでの間に、且つ発見されてから遅滞なく分与の申立がなされたときには民法第九五八条の三第二項の規定に拘らず、その分与申立を適法のものとするのが相当である。何となれば、このような場合民法第九五八条の三第二項の定める期間内に分与申立をすることは事実上不可能であるばかりでなく、上記規定をそのまま適用すれば分与申立の機会をはじめから与えないのと同様の結果となり、民法第九五八条の三第一項の趣旨に添わないこととなるからである。

本件申立は適法のものというべきである。しこうして申立人は被相続人と生計を同じくし且つその看護療養に努めた者であることを認めることができ、本件土地を申立人に与えるのが相当である。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 中田早苗)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例